実学の砦。阿見町・茨城大学農学部
【NEWSつくば連載 日本一の湖のほとりにある街の話vol.21】
人はパンのみにて生くるものにあらず。しかれども、パン無かりせばそも生くること能わず。
我々生き物に必要不可欠な食物。阿見町・茨城大学農学部では、食料の生産・品質の向上改善のための様々な研究がなされています。今回、同大国際フィールド農学センターの小松﨑将一教授に、土浦・美浦・阿見、三市町村連携による、生ごみリサイクルによる地域環境改善と食物生産向上の研究について、お話を伺いました。
地球温暖化対策ならびに廃棄物の抑制は、現代における喫緊の課題となっています。そうした中、土浦市の日立セメント株式会社では、生ごみの発酵処理によるメタンガス等のエネルギー生産と、発酵残滓(残りかす)による堆肥生産を行っています。しかし、この堆肥は栄養成分バランスの偏りという問題がありました。一方、JRAトレーニングセンターを擁する美浦村では、連日大量の馬糞が発生し、この成分の地中への溶脱による水質低下などが問題視されていました。
ここで、阿見町・小松﨑教授の出番です。教授は日立セメントの発酵残滓に、鶏糞・牛糞・馬糞をそれぞれ混合し、その育成効果の研究を行いました。その結果、残滓に対し50%の馬糞を混ぜることにより、コマツナの育成実験において、5.9倍の生育向上という目覚ましい成果を確認したのだそうです。
もともとの発酵残滓は、さらに二次発酵をさせれば肥料としての性能は向上するものの、そのためには新たな設備を追加せねばならず、割高なものになってしまいます。それに対し同研究は、発酵残滓に馬糞という地域資源を混ぜるだけで劇的に肥料効果を高めるという、簡便かつ地域が連携して問題を解決していくという、実に素晴らしい内容です。
実学の極みたる農学のお話は、伺いつつワクワクが止まらない、素晴しいひと時でした。余談ですが、つねづね定年退職したら、改めて大学で勉強し直したいと思っています。芸術をやり直す、経営を学ぶなど考えていましたが、農学も素敵だな…と、新たな悩ましい選択肢が浮かぶ取材となりました。
本記事は、NEWSつくばにて連載のコラム「日本一の湖のほとりにある街の話」第21回記事です。
元記事はこちら→阿見町の茨城大学農学部《日本一の湖のほとりにある街の話》21
茨城大学農学部:
所在地:茨城県稲敷郡阿見町中央3-21-1
tel:029-887-1261
農学部附属国際フィールド農学センター:
所在地:茨城県稲敷郡阿見町阿見4668-1
tel:029-888-8702
公式HP→【茨城大学農学部】
阿見町:
霞ケ浦西浦の南岸に位置し、大正11年の霞ヶ浦海軍航空隊開設により、予科練の街として知られるようになりました。現在は茨城大学、東京医科大学など学生の街となっています。
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美浦村:
霞ケ浦西浦の南岸に位置し、日本考古学の原点である縄文遺跡・陸平貝塚が発見された美浦村。日本競馬会の中心地、JRA美浦トレーニングセンターがあることでも有名です。
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土浦市:
霞ヶ浦西浦の西端に位置し、江戸の頃より茨城県南の要所として栄えてきました。ナショナルサイクルルート「つくば霞ケ浦リンリンロード」の拠点となっています。
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