美味しさと,気高い志と。石岡市,トラットリア・アグレステ

石岡市鹿の子の五叉路沿い。高原の避暑地に建つ教会のような,荘厳さと清涼感を感じさせる切妻屋根の黒い建物が佇んでいます。

駐車場で車から降り,季節ごとに表情を変える樹々が並ぶアプローチを進むと,塀の途中にあらわれる木の扉。そこをくぐると,爽やかな雑木林のような庭園が広がります。大谷石敷きのアプローチを通り建物に入ると,そこは黒い外観とは対照的な,大谷石の壁・松の太鼓落しの梁が並ぶ,明るく爽やかな大空間。

ここトラットリア・アグレステは,石岡市というよりも,茨城県内トップレベルの素敵なイタリアンレストランです。

メニューはどれも美味しいだけでなく,地産地消が貫かれています。レンコンや霞ヶ浦産のシラウオをのせたピッツァ。市内の朝日里山学校近くで焼かれたパン。豚肉は,地元養豚場の特別飼料で育てたもの。そのほかの素材も,どれも生産者の顔が感じられます。

それは,建物や庭についても同様です。建物にふんだんに使われている木材は茨城の県産材。ピザ窯の上のフードや什器はつくば市の鍛造作家さん,爽やかな風薫る庭園は市内の造園作家さんが手掛けており,このお店で目に入るものは,この茨城という土地に根差したものばかりです 。

ここまでの内容だけでもレストランとして素晴らしいのですが,このお店の真価はここが就労支援の場であるという事。社会福祉法人白銀会が設立・運営しており,知的ハンディを持った方が,スタッフとして就労トレーニングにあたっています。しかしながら,そのことを前面に押し出してはいません。お店のHPには,次のような言葉があります。

“ここは就労継続支援B型ですが,一般企業への就労に向けた「通過点」です。 作業レベルが一般企業にも通用するレベルにまで達している人も多く,成長には目を見張るものがあります。お客様には,ハンディのある人が職業トレーニングをしながら働いていることは特にお伝えしていません。 ハンディのある人もない人も肩を並べて働けるということをお見せしたいからです”

「福祉」を金看板に掲げることなく,実にさりげない形で運営されているその姿は,福祉の一つの理想形であるように思います。

食事や雰囲気といった部分だけでなく,社会的意義・志の高さまで兼ね備えることは,容易な事ではありません。このようなお店があることを,同じ県民として誇りに思わずにいられない。このお店は,そんな存在です。

トラットリア・アグレステ:
所在地:茨城県石岡市鹿の子4-1-3
電話:0299-56-6198
営業時間:11:30~21:00
定休日:月曜日
公式HP→【トラットリア・アグレステ】

※新型コロナウイルスの影響により,営業時間が変更になる場合があります
※茨城版グッドデザイン賞と言える,茨城デザインセンター主催「いばらきデザインセレクション」において,同店は知事選定を受賞しています。

石岡市:
霞ヶ浦西浦から筑波山の間の肥沃な土地に恵まれ,各種果物や清酒どころとして知られています。常陸国発祥を伝える多くの史跡のほか,市街地のレトロ建築物も人気です。
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