漁民安寧の願いを帆に込めて。霞ヶ浦の帆引き船
霞ケ浦の風物詩、帆引き船。雄大な湖面と、風をはらみ大きく広がる白い帆のコントラストは、多くの写真愛好家をひきつけて止みません。この帆引き船は、明治時代初期に、現在のかすみがうら市出身の折本良平が、漁民の生活安定のために発明したものです。
良平による帆引き船考案以前は、1km以上の大きな網を数十人の人手で引く「大徳網漁」が行われていました。この漁では、収入の多くが網元のものとなりましたが、そんな状況を憂えた良平が、漁民の収入向上のため、少人数での漁が可能な漁船として生み出したのが「帆引き船」です。この発明により、地域の生活は大きく安定したといいます。
帆引き船はメカニズム上、帆に受ける風と、水中の網の抵抗力をバランスさせ、操縦されています。このため、水中の網、そしてそれを帆とつなぐ綱なくして、帆引き船は運行しえません。まさに、霞ヶ浦の風をうけ、漁をするために発明されたものだったのです。
一方で、現在の観光帆引き船は、獲った魚を売ることができない「特別採捕」という許可のもとで操業されており、もっぱら水上の白い帆面にばかり視線が行きがちです。ですが、その成り立ちを想い、水中の網にまで思いを馳せながら鑑賞することで、より趣深い姿が見えてくるのではないでしょうか。
※かすみがうら市坂の「かすみがうら市歴史博物館」では、帆引き船に関する多くの資料を見ることができます。
かすみがうら市歴史博物館:
所在地:かすみがうら市坂1029-1
電話:029-896-0017
営業時間:通常 9:00~16:30
定休日:12月28日~1月1日・月曜
公式HP→【かすみがうら市歴史博物館】
→茨城新聞2019年9月6日版に、連載「日本一の湖の ほとりにある 街の話vol.04」として掲載されました。
かすみがうら市:
霞ヶ浦西浦の北岸に長く伸び,古くから農業漁業がさかんなほか,茨城県内有数の果物産地でもあります。明治期に同市出身の折本良平が開発した帆引き船は霞ヶ浦の風物詩。
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