悲運の姫が紡いだ美しい絹糸。神栖市・蚕霊神社の金色姫伝説
ここ茨城県には、養蚕発祥の地との伝説が残る場所が、神栖市、つくば市(※1)、日立市の3か所にあります。その各地に「金色姫」というほぼ同様の、概ね以下の様な伝承が残っています。
「紀元前3世紀ごろ、天竺(インド)の国王・霖夷(りんい)には、世にもまれなほど美しい娘・金色姫がいた。母が亡くなった後、継母は金色姫の美しさに嫉妬し、姫をあの手この手で亡き者にしようとした。
ついには桑で造った丸木舟に押し込め海に流したところ、舟は常陸国豊浦浜に漂着。土地の漁師、権大夫とその妻に救われる。薄幸の運命に心を痛めた夫婦は、姫を看病するも病気で亡くなってしまう。
死後、小虫となり変わった姫に、夫婦が桑の葉を与えていると、やがて美しい糸を吐きながら繭を作った。その繭から繰りとった絹糸で織り上げられたものが、見事な常陸絹織となり、名声を得て各地に広まった」
さて、今回はこのうちの一つである神栖市の蚕霊(さんれい)神社のご紹介です。こんもりとした鎮守の杜に囲まれたこの神社に伝わるこの「金色姫」の伝説は、同地の「うつろ舟(※2)」の話との関連性が高いとされ、研究者の興味を引いているのだそう。
それぞれの話で共通する「ねり玉青し」「小はぜスイセう」「アヲ色ニテねリモノ」と記述される女性の衣服ボタンは、蚕の卵の孵化直前の色を想起させ、養蚕をうかがわせるのとの事です。
時を経て、神栖市では明治時代に養蚕が大変盛んとなり、県内でも一・二を争う規模に成長。そのような隆盛を誇ったのも、金色姫のご加護だったのかもしれませんね。
※1.つくば市についてはこちら→【養蚕創始縁起が伝わる。つくば市・蚕影神社】
※2.うつろ舟の話についてはこちら→【江戸のUFOミステリー!神栖市・うつろ舟】
蚕霊神社:
所在地:茨城県神栖市日川720
神栖市:
西は外浪逆浦,東を鹿島灘に面する神栖市は,東国三社のひとつである息栖神社を擁し,古代から開けた土地として栄えました。ピーマンの生産量日本一を誇ります。
その他の記事はこちら→【神栖市】