
まるでミレーの絵画のよう。香取市・わらボッチの風景
千葉県の秋の風物詩、畑に整然と並ぶ落花生の「わらぼっち」。香取市内を車で走っていると、今もこの独特の光景に出会います。
わらぼっちとは、収穫した落花生の株を、実がついた根の方を中央にして積み重ね、天日干しするために束ねたもの。素朴なフォルムがリズムよく並び、秋の陽射しを受けて輝くさまは、ミレーの絵画を見ているかのようです。
地中で実る落花生は、収穫後すぐに土から離して乾燥させなければ風味が落ちるため、この天日干しの工程が行われてきました。落花生の株が空気を均等に含むよう工夫されたわらぼっちは、先人の知恵の結晶。数日から一週間ほど自然乾燥させることで、芳ばしさが増し、深い甘みが生まれるのだそうです。
しかし、近年では機械乾燥が主流となり、わらぼっちの姿は年々減少。効率を考えれば当然の変化ではありますが、だからこそ、地域の営みと風土を伝えるこの素朴な“生きた風景”に出会えた時は、じんわりと嬉しさがこみ上げます。

