伝統の街並みを、おもてなしの心がつつむ。真壁のひなまつり
【NEWSつくば連載 日本一の湖のほとりにある街の話vol.20】
茨城県唯一の重要伝統的建造物群保存地域である桜川市真壁地区。この歴史ある街並みで開催される「真壁のひなまつり」は、平成15年より地域有志によって行われ、令和6年で第20回目を迎えます。今回はこのおまつりについて、第一回開催時からの有志の一人、柳田隆さんにお話を伺いました。
現在では6万人もの観光客が訪れる、桜川市の一大行事となったこのおまつりですが、そのスタートは地元住民の素朴な話し合いから生まれたものだそうです。平成14年に登録文化財の数が10軒ほどとなり、春や秋に地域を散策する観光客が以前より増えると、わざわざ足を運んでくれる人たちを、何かおもてなしすることはできないだろうか、という声が自然にあがりはじめました。
そんな折、たまたま立ち寄った山形県で、家々におひなさまを飾り、訪れる人たちに見てもらっている光景を柳田さんは目にします。「古いお雛様が、真壁でも家から出てくるのではないか?」そう考え、真壁に帰りすぐ皆でおひなさまを探すと、昭和や大正のものだけでなく、江戸時代のものまで見つかったそうです。
そうして、見世蔵や土蔵・石蔵・塗屋といった伝統的な建物の中を、様々な時代の個性豊かなおひなさまが彩った、和の風情あふれる第一回目のおまつりが始まりました。街を訪れる人達が喜ぶ様子を見て途中から参加する家も現れ、スタート時に21軒だった参加会場は最終的には43軒まで増加。当初用意していた案内図の内容が、日を追うごとにどんどん変わっていったそうです。
また開催にあたり、ただおひなさまを並べて見てもらうだけのものにせず、「おもてなし」の心を第一に、おひなさまを通じ、地域を訪れた方とのコミュニケーションを心掛けたそうです。おひなさまと伝統的町並みが織りなす風情や、地域の人達とのあたたかな交流は好評を博し、回を重ねるごとに参加する家は増えました。東日本大震災や新型コロナウイルスの感染拡大といった試練を乗り越え、20回目となる令和6年の開催では127軒の家々が参加予定です。
高齢化などにより最盛期より参加する軒数は減っているものの、地域にとっては地元再発見と愛着形成の機会となり、観光客には真壁の良さを感じてもらえるこのおまつりを、大切に続けていきたいと柳田さんは穏やかに語ってくださいました。開催は毎年2月4日から3月3日まで。伝統的な日本の風情とおもてなしの心を味わいに、ぜひお出かけください。
本記事は、NEWSつくばにて連載のコラム「日本一の湖のほとりにある街の話」第20回記事です。
元記事はこちら→桜川市真壁のひなまつり《日本一の湖のほとりにある街の話》20
真壁のひなまつり:
開催期間:例年2月4日~3月3日
開催地:桜川市真壁
※真壁重伝建地区の記事はこちら→【茨城県内唯一!重要伝統的建造物群保存地区、桜川市・真壁の街なみ】
桜川市:
筑波山の北麓に位置する、山と里の景色豊かな桜川市には、茨城県内唯一の重要伝統的建造物群保存地区・真壁の街並みをはじめ、歴史を感じさせる風景が多く残されています。
その他の記事はこちら→【桜川市】