つくばの風土が育む美味しいワイン。つくばワイナリー

【NEWSつくば連載 日本一の湖のほとりにある街の話vol.29】
霊峰筑波山のふもと、なだらかな斜面に広がるブドウ畑のパノラマ。爽やかな風が吹き抜ける、どこか日本で無いような風景の中に、新進気鋭のワイン醸造所「つくばワイナリー」はあります。「日本ワイナリーアワード 2023」三つ星受賞、「日本ワインコンクール 2024」銅賞受賞など、着実に評価を固める同社。今月23日に新酒発表会を迎えるにあたり、食品事業部部長の大塚さんと、醸造責任者の大浦さんにお話を伺いました。
 
ワイナリーがスタートしたのは2012年。小美玉市のみつお万寿や不動産事業を手がける「(株)カドヤカンパニー」が土地を取得しますが、当初はワインをつくる予定はなかったそう。ところがワイン好きの社長がその素晴らしい景観に惚れ込み、ブドウ栽培を行うことになったと言います。栽培にあたっては、山梨の志村葡萄研究所の指導のもと、研究所により開発された黒ブドウ「富士の夢」と、白ブドウ「北天の雫」が主軸に据えられました。

「富士の夢」は、ふくよかでフルーティーな味わいが魅力のメルローと山ぶどうの交配種。「北天の雫」は、甘みと酸味のバランスが素晴らしいリースリングと山ぶどうの交配種で、いずれも日本の気候風土に合うよう作られた品種です。水はけがよい花崗岩質の土壌と、筑波山から吹き降ろす「つくばおろし」により熱気がこもらない地形はブドウ作りに最適で、現在は8種類7千本のブドウがその豊かな葉を繁らせています。

さて、そんなワイン用のブドウ。10月の取材時にはまだ枝に少し残っており、生で食べさせていただきました。美味しいワインのもとになるブドウ、さぞや美味しかろうとワクワクしながら口にすると…甘みとともに、鮮烈な酸味。ふだん生食するものとはずいぶん味が違うことに驚きです。しかしこの酸味が発酵には重要で、甘いだけでは美味しいワインにはならないそうです。おお、なにやら人生を感じるお話。

そしてワインの出来は、広大な畑にどれだけ手を入れられるかで大きく変わる、と大浦さん。春先には7千本ある樹を全て、良い枝二本だけを残し、その他の枝を切るそうで、想像するだに大変です。その後、お盆過ぎから収穫作業が始まり、平行して仕込み作業も行って行きますが、収穫は果実の状態と、天気の両方をにらみながらのスピード勝負!圃場に醸造所が併設されていることを活かし、丁度よく熟した房のみ摘み取り、順にワインにしていきます。

また、そのすばやい収穫を支えているのが、総勢60名にもなる「栽培サポーター」。老若男女・近隣から遠方まで、様々な人がぶどう畑の魅力に惹かれ手伝いに来ており、すでに地域の中に溶け込んでいることを感じさせます。そうした地域とのつながりを深めつつ、地場に根付いたワインを生産していきたい、とお二人は語ります。筑波の風土に育まれた今年の新酒は、どんな表情を見せてくれるのでしょうか。若いワイナリーが醸し出す味わいを、これからも楽しみにしたいと思います。

本記事は、NEWSつくばにて連載のコラム「日本一の湖のほとりにある街の話」第29回記事です。
元記事はこちら→《筑波山麓の「つくばワイナリー」《日本一の湖のほとりにある街の話》29》

つくばワイナリー
所在地:茨城県つくば市北条字古城1162-8
営業時間:13〜17時 土日祝 10〜17時
公式HP→【つくばワイナリー】

つくば市:
万葉の昔より信仰の対象とされてきた名峰・筑波山の南麓に位置し、数多くの研究機関が集積する科学の街・つくば市。研究所をまわる夏休みのサイエンスツアーも大人気です。
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