悠久の研鑽による叡知の結晶!阿見町・ツムラ漢方記念館

【NEWSつくば連載 日本一の湖のほとりにある街の話vol.06】
医療用漢方製剤の国内シェア8割超を販売し、漢方業界を牽引する株式会社ツムラ。その国内最大の生産拠点と国内唯一の漢方記念館が、霞ヶ浦の豊富な水資源を背景に、阿見町に設立されている事をご存じでしょうか?今回はそのツムラ漢方記念館の瀬戸館長に、奥深い漢方の世界についてご紹介頂きました。

医療関係者を中心に漢方の歴史や製造工程を伝え、漢方への理解を広めるために設立されたこの記念館は、阿見町のツムラ茨城工場や研究所のある敷地内に位置しています。来館してまず驚くのが、敷地内に入るとともに場に満ちる漢方薬の香り。

期待とともに記念館に足を踏み入れると、正面奥には漢方薬の原料となる生薬がぎっしり詰まった透明な円柱が建ち並んでいます。植物・動物・鉱物など、自然由来の原料生薬はアースカラーのグラデーションをなし、さながら美しい現代アートのよう。

ところで「漢方」と聞いて「中国医学」と思う方も多いかもしれません。ところが実は漢方とは、5~6世紀頃に中国より渡来した医学をベースに、日本の気候風土・日本人の体質にあわせて発展した、日本独自の伝統医学。

漢方医学は考え方が西洋医学と異なり、病気の「原因」を探しそれを取り除くという西洋医学に対し、患者全体を診て自然治癒力や抵抗力に働きかけ、体全体のバランスを整えるという考え方から成っています。

また漢方薬は、自然由来の生薬を原則2種類以上組み合わせてつくられます。西洋薬は、一つの病因の解消を図るのに対し、漢方薬は多成分の生薬を複合させた薬であるため、一つの薬で複数の症状に効果を発揮することもあります。

患者の症状や体質に着目する事から、検査値などに現れない不調や病名がつかない未病など、西洋医学では対応が難しい体の不調に対応できるケースも多く、現在認可されている148種の漢方薬は、9割に及ぶ医師により医療現場で処方されているとの事。

記念館では、アクリルケース内の生薬原料見学のほか、様々な生薬の匂いを嗅いだり、薬学部の学生向けに調剤を体験できるコーナーなど、漢方の奥深さを体感する事ができます。

展示されている116種の原料生薬の中には「なんでこれが体にいいと分かったの?」と思うようなものも数多く、例えばボタンの根から作る「ボタンピ」は、根の中心の数ミリの芯を取り除いた外皮の部分のみを使うのだそう。芯を取り除くのが最良と分かるまで、どれほど臨床を重ねたのでしょうか…思わず目が眩みます。

長い歴史と悠久の研鑽による叡知の結晶を、肌で感じることができるこの漢方記念館。幅広く魅力が伝わるよう、ウェブ上で「TSUMURA バーチャル漢方記念館」も公開されており、概要の見学が可能です。また、12月から県内の中学、高校向けにもオンラインでの見学を受け付けるとのこと。ぜひ一度ご覧ください!

本記事は、NEWSつくばにて連載のコラム「日本一の湖のほとりにある街の話」第6回記事です。
元記事はこちら→阿見町のツムラ漢方記念館《日本一の湖のほとりにある街の話》6

ツムラ漢方記念館:
所在地:茨城県稲敷郡阿見町吉原3586
公式HP→【TSUMURA バーチャル漢方記念館】

阿見町:
霞ヶ浦西浦の南岸に位置し、大正11年の霞ヶ浦海軍航空隊開設により、予科練の街として知られるようになりました。現在は茨城大学、東京医科大学など学生の街となっています。
その他の記事はこちら→【阿見町】

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