人間のための街路。つくば市・ペデストリアンデッキ

都市計画の名著「人間のための街路」の冒頭で、著者のバーナード・ルドフスキーは「街路は母体である。都市の部屋であり、豊かな土壌であり、また養育の場である…」としています。

そこで提示されているのは、街路が単なる移動の場でなく、歩行する「人間」が、豊かな文化に触れえる空間としての街路です。

研究学園として開発されたつくば市中心部を、南北に走るペデストリアンデッキ(歩行者専用道路)は、その言葉を実感できる、地方都市としては稀有な場所。

狭い道路を高速走行する車に怯えることなく、ワイワイと通学する子供達。要所に配置された公園で、スポーツや散歩を楽しむ老若男女。北側の終点、筑波大学構内では、授業の合間を自転車で移動する学生たち…。そこには、自動車が我が物顔で走り回る、日本の一般的な道路の醜悪な喧騒はありません(※)。

このペデストリアンデッキこそ、つくば市が誇れる地域文化の一つと言えるでしょう。しかしながら大変残念な事に、近年急速に開発されている研究学園地区において、この文化は顧みられることなく、旧来型のロードサイド店が並ぶ凡庸な田舎町へと逆行してしまいました。

かつて都市計画を学び、少しでも美しく・豊かな街の実現を願い、仕事としてきた身としては、残念でなりません。


※筆者は前職までで関東1都6県を社用で走ってきましたが、運転マナーの悪さは、残念ながら茨城県南が群を抜いて酷い、というのが偽らざる実感です。

つくば市:
万葉の昔より信仰の対象とされてきた名峰・筑波山の南麓に位置し,数多くの研究機関が集積する科学の街・つくば市。研究所をまわる夏休みのサイエンスツアーも大人気です。
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