その街角に、人生の縮図を想う。土浦市・桜町
北関東屈指の風俗街として知られる茨城県土浦市桜町。その成り立ちは明治時代の花街の頃にさかのぼる。さらに大正時代、霞ヶ浦海軍航空隊の慰労にあたり、料亭や飲食店、カフェー(※1)等が集められたことでその基盤が固められた。
現代に至るまで歓楽街として大いに栄えるも、2020年の新型コロナウイルスの流行により、その売り上げは大きく減少。だが、お店の前に立つ男性に話を聞くと、2022年現在、客足は戻ってきているそうだ。
こうした事象について、人によっては不埒と眉をひそめる向きがあるかもしれない。だが、そこで糧を得る人があり、慰めや救いを求める人がいるのも事実。埒の外にもまた、人生の妙味は転がっている。
朝、街区を横切って学び舎へ向かう学生。夜、熱気のこもった人の流れと、その熱を残した早朝の男女の喧騒。そして昼、路地裏で静かに猫と戯れる老女。
クリムトの「女の三世代(※2)」を感じさせるようなそれらの光景は、なんだか人生の縮図のようで。だから、色街は味わい深い。
※1.カフェー:現代における、コーヒーを主たる飲食物として提供する店とは異なり、女給のサービスを売り物とする風俗営業としての店舗。建築物としても独特の意匠をこらしたものが多く、昭和初期には谷崎潤一郎の「痴人の愛」をはじめ、様々な文学の舞台としても登場した。
※2.女の三世代:1847年に結成された芸術家グループ「ウィーン分離派」の中心人物「グスタフ・クリムト」による絵画。官能的かつ死を想起させる作品を多数制作した同作家の代表作の一つである。若い母親とその腕の中で安らかに眠る幼子という、生命のイメージに満ちたモチーフと共に、手で顔を覆いうなだれて立ち尽くす、死の気配を漂わせる老女を配し、生と死の円環を表現している。
土浦市桜町:
土浦市:
霞ヶ浦西浦の西端に位置し,江戸の頃より茨城県南の要所として栄えた。ナショナルサイクルルート「つくば霞ヶ浦リンリンロード」の拠点となっている。
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